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モーターサイクルダイアリーズ

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版
/ アミューズソフトエンタテインメント
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1952年のある日。23歳と29歳の若者がボロいバイクで南米大陸縦断の旅に出る。23歳の医学生エルネストは、その数年後、革命に身を投じ、チェ・ゲバラとして世界を震撼させることになるが、今はまだ漠然とした大志を抱く、平凡な青年だ

映画の中では共産主義や、革命といった後の彼の行く末は直接的には出てこない。片鱗もないと思っていい。特に前半は、バイクのありえないボロさと美しい風景が手伝って、笑いあり恋ありの「ラテンやじきた道中」と、言う感じ。非常にみずみずしく、楽しい

後半、虐げられた南米大陸の人々の現実に触れていくにつれ、映画の雰囲気は変わってくる。これはまさにエルネストの心境の変化とも対応しているのだろう。ただ、風景の美しさ、同行者アルベルトの朗らかな漢っぷりは健在なので、過度に悲壮なわけではない。

この映画を見、原作のゲバラの日記を読んで最も感じたのは、時代の空気、だ
今から50年前、理想に燃える若者や貧困に苦しむ人々にとって、「共産主義」や「革命」という言葉はどれだけ輝いていたのだろうか

特に、南米大陸は何重もの矛盾や分断、貧困に苦しんでいた(今もあまり変わってないらしいが)。ヨーロッパ人による旧国家の破壊、先住民や混血への差別、大金持ちと貧乏人、宗教差別、アメリカによる経済的搾取、独裁による政治的弾圧、奴隷、国同士のいさかい。これらが何重にも交差して、人々を縛り付けていた。それがふたりが目にした南米大陸の現実だった。特に、旅の最後を過ごすハンセン病施設は、それらの矛盾や差別がすべて流れ込む、逆円錐の頂点、底辺中の底辺だ

旅の前にエルネストの胸にあったのは、若者らしいばく然とした理想だった。しかし、彼は非常に強い感受性でさまざまな現実を見聞きし、それを原風景にして、ただの医師になるだけでは達成し得ない、大きな何かを抱えてしまった。そして、数年後、世界各国の若者を駆り立てていた「共産主義」「革命」に結びついた

だから、この旅が、革命家チェ・ゲバラの原点であることは、たぶん正しいのだろう。チェ・ゲバラについては、一般的な情報しか知らないが映画を見ていてそう直感した
by kaeru.ouji | 2005-06-15 21:46 | 本・映画・音楽


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